ふりかえり

「ふりかえりのふりかえり」とは何か — ROTI と +/Δ でふりかえり自体を見直す

ふりかえりを半年も続けていると、だいたい同じことが起きます。KPT の枠は埋まる。でも出てくる Problem は前回と似ていて、Try は誰も覚えていない。時間は使っているのに、何かが変わった感じがしない。

このとき点検すべきなのは、チームの仕事の進め方ではありません。ふりかえりそのものです。それをやるのが「ふりかえりのふりかえり」です。

「ふりかえりのふりかえり」とは

ふりかえりの最後に数分だけ取って、いま終わったばかりのふりかえり自体を見直すことです。

言葉に「ふりかえり」が2回出てくるので身構えますが、意味は単純です。

  • 1つ目の「ふりかえり」= 見直す対象(いまやったふりかえり)
  • 2つ目の「ふりかえり」= 見直すという行為

「今日のふりかえり、どうだった?」を全員で答える時間、と考えれば十分です。

日本のアジャイル開発の現場でよく使われる言い回しで、英語圏では meta retrospective や retro on the retro と呼ばれることもあります。元をたどると、『アジャイルレトロスペクティブズ』が示すふりかえりの5つの段階のうち、最後の「ふりかえりを終える」で紹介されている手順にあたります。この記事で扱う ROTI と +/Δ も、そこで挙げられているやり方です。

何のためにやるのか

チームの進め方は、ふりかえりのたびに点検されます。ところが、点検しているその場を点検する機会は、どこにもありません。

だからふりかえりは、チームの活動の中でいちばん形骸化しやすい場所です。

  • 毎回同じ手法を使っていて、もう新しい話が出てこない
  • 時間が足りず、いつも最後の人の意見が流される
  • 発言する人が固定していて、残り半分は黙っている

こういうことは、参加者は気づいていても自分からは言い出しません。 進め方への文句という形になるからです。

進め方に不満があるかどうかを、聞かれる場を作るところまでが仕組みの仕事です。

Kizuna では「この場をふりかえる」と呼んでいます

Kizuna にもこの時間を用意しましたが、名前は「ふりかえりのふりかえり」にしませんでした。理由は2つあります。

1つは、言葉遊びに近く、初めて見た人に意味が伝わらないこと。同じ単語が続くので、「同じことをもう1回やるのか?」と読まれてしまいます。

もう1つは、Kizuna ではこれを発表が終わったあとに選ぶ形にしたことです。ホストの画面に「この場をふりかえる」「レポートを書いて終了」の2つが出て、どちらかを押します。ボタンに書く言葉は、押した先で何が起きるかがそのまま分かる必要があります。

「この場」は、いま終わったばかりのこの時間のことです。動詞は1つだけなので、何をするのかで迷いません。

ROTI — かけた時間に見合ったか

ROTI は Return On Time Invested(投資した時間に対する見返り)の略で、もともとは会議の終わりに使われていた評価のやり方です。「この時間は、かけた時間に見合いましたか」を各自が点数で答えます。

Kizuna では 1〜5 の5段階で聞いています。

点数意味
1見合わなかった
3どちらとも言えない
5十分に見合った

大事なのは点数そのものではなく、その点数にした理由のほうです。「3」が並んでも何も分かりませんが、「発表の時間が足りなかったので3」なら、次回に手を打てます。

そして、低い点を出した人を責めないこと。 ここを守れないと、次から全員が4か5をつけるようになり、この時間ごと意味がなくなります。

+/Δ — よかった点と、次に変えたい点

ROTI と一緒によく使われるのが +/Δ(プラス・デルタ) です。

  • … よかった点。続けたいこと
  • Δ次に変えたい点

Δ はギリシャ文字のデルタで、理数の世界では変化量を表す記号です。だから Δ の欄に書くのは「悪かった点」ではなく、「次はこう変えたい」です。

「悪かった点」と書かせないのは意図的です。悪かった点を挙げようとすると、どうしても誰かのせいの話になりやすい。「次はこうしたい」なら、同じ不満を次の行動の形で出せます。

KPT の Problem との違いもここにあります。Problem は問題を挙げたところで止まりがちですが、Δ は最初から変更案の形をしています。

点数を先に見せない

Kizuna では、全員が書き終わるまで誰の入力も表示しません。

先に誰かの「5」が見えてしまうと、1や2はとても出しにくくなります。最初に見た数字に引きずられるのは、人の判断の癖として避けようがありません。書いている間に見えるのは「誰が書き終わったか」だけで、全員そろった時点で点数の内訳とコメントが一斉に出ます。

出そろったあとは、点数も含めて全員が見ます。 ホストだけが見る形にしなかったのは、これがチームの共有物だからです。

毎回やらなくていい

最後にひとつ。これは毎回やる必要はありません。

毎回点数をつけていると、点数をつけること自体が儀式になります。Kizuna で必須にせず、発表のあとに選ぶ形にしたのはそのためです。

入れるとよいのは、このあたりです。

  • 手法を変えた回
  • 新しいメンバーが入った回
  • 「最近ふりかえりが作業になってきた」と感じたとき

ふりかえりが続かないチームより、続いているのに変わらないチームのほうが、この時間の効きは大きいです。 続いているということは、見直す材料がもう十分に溜まっているということだからです。

ふりかえりの手法そのものはふりかえり手法一覧にまとめています。手法を変えてみる回に「この場をふりかえる」を1回はさむと、次にどの手法を選ぶかの当たりがつけやすくなります。

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